山岳観光
合併によって薬師岳が富山市の山になりました。富山県は長野県についで3千メートル級の名峰を有する山岳王国です。観光登山で知られる立山にくらべて、アプローチの長い薬師岳は、それほど知られていなくとも優美な山容とともに、岳人好みの山といえます。合併記念として今回に限り、恒例になっている小・中学生の立山登山を薬師岳に変えました。
環境への配慮
下見をかねて、山開きに同行しました。以前の太郎平は、登山者によって草原が踏み荒らされ、無制限に広がるのではないかと心配をしていました。今回歩いてみて、登山道周辺が棕櫚網で覆われ、生え付きにも木柵と棕櫚縄の泥止めが施されて、かなり修復が進んでいることに驚かされました。
写真では分かりづらいですが、登山道は山石を敷いて最小限に縮め、雨水はその下を流れます。休憩も昔と違って草の上で自由にとはいかず、登山者には窮屈になりました。けれども、以前は道全体が赤土むき出しで何とかならないかと気をもむより、同行者もルールを守って不自由な思いをしている方が、はるかにうれしいことでした。
有峰湖
薬師岳登山のすばらしさの一つは、樹林帯を抜けると常に眼下に有峰湖が見えることです。旧富山市9割強の飲み水の水源であることを知れば、体を守る薬師如来が命のミナモトを抱えていることがよく分かります。湖周辺は沢も少なく荒れていません。登山道から見下ろす北の俣岳山麓のうつくしさは、このままそっとしておきたい衝動にかられます。
登山と観光
山開きの挨拶のなかであえて、薬師岳を観光の山として誘致に力を注ぐべき、とは言えませんでした。観光の登山となると、簡便に山登りをして自然を楽しむという「気楽さ」に応えなければなりません。そのため常に、いかに自然を守りながら観光のもつ気楽さに努めるかという矛盾に悩まされます。
有峰の折立から入る太郎平は、薬師・水晶・黒部五郎への十字路。山好きであれば、大事にしておきたい奥座敷への出入り口であることを知っています。真から山を愛する人に呼びかける「山岳観光」としてのPR。それには立山とはひと味違った観点が必要です。
有峰森林文化村の哲学者・梅原猛村長は、森と水の涵養こそが今世紀の人類の課題であることを説いておられます。登山道ひとつとっても薬師岳登山は、有峰湖周辺の環境保全にかかわっているかが分かります。来月に引率する子どもたちにも、ガマンすることを体験させながら、ひとはいかに自然と共にあるかを知ってもらいたいと思っています。
投稿者 松本弘行 : 2006年06月30日 16:28